研究概要 |
関口病斑形成変異イネのいもち病菌に対する関口病斑形成を伴った光依存的抵抗性の発現にトリプタミン経路が深く関与していることを報告した.今回は,オオムギにおけるいもち病菌に対する光依存的抵抗性誘導とトリプタミン経路の関係について調査した.オオムギ葉にいもち病菌を接種し,光照射区に保つと,光依存的にいもち病斑形成は抑制され,多数の褐点病斑が形成された.褐点病斑中のいもち病菌の菌糸進展は著しく抑制されていた.さらに,褐点病斑部からはいもち病菌に対して抗菌性を示すトリプタミンが同定された.そこで,トリプタミン蓄積とトリプタミン経路関連のモノアミン酸化酵素の活性を経時的に調査した結果,光照射区のいもち病菌接種オオムギ葉では接種24時間後からトリプタミンが蓄積し,モノアミン酸化酵素の活性も増加した.しかし,いもち病斑の形成された暗黒区のオオムギ葉ではトリプタミン蓄積やモノアミン酸化酵素の活性は増加しなかった.これらのことは,オオムギにおいてもいもち病菌に対する光依存的な抵抗性の誘導が認められ,それにはトリプタミン経路が関与している可能性を示した.一方,光合成阻害剤DCMUを前処理後にいもち病菌を接種したオオムギ葉では,光照射下でさえも多数のいもち病斑の形成と細胞内での著しい侵入菌糸の伸展が観察された,また,光合成阻害剤の前処理葉では蒸留水の前処理葉に比べて,モノアミン酸化酵素の活性とトリプタミン蓄積は著しく抑制された.これらの結果より,オオムギに光誘導抵抗性機構が存在し,その誘導には光合成が関与している可能性が示された.
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