世界各国、即ちヨーロッパ、東アジアそして日本を含めたアジア地方からカブモザイクウイルス(TuMV)を数百分離株採集し、それらの中から地理的分布を考慮して、分離株を選抜し、それらの分離株の病原性や宿主域についての検討、さらに一部ゲノム領域および全ゲノム構造について決定した。それらの塩基配列より分子進化的コンピュータプログラムを用いて組換え、突然変異、選択圧等を解析してきた。その結果、Brassica-Raphanus(BR)の病原性を有する東アジア産TuMVには明瞭な組換え体がみられるのに対して、ヨーロッパを含んだ旧世界の分離株には明瞭な組換え体が少なく主に限られた遺伝子に集中していた。また、分子系統学的に見られた遺伝型について宿主からの選択圧を解析すると、最近進化してきた分子系統樹の遺伝型において選択圧が高いことが分かり、これらの現象は、Raphanus植物にウイルスが適応してきたからと思われた。 本邦の分離株について東アジアとの関連性について集団遺伝学的な立場から調査すると、一部の遺伝型は日本において最近拡散してきたウイルスであることが判明した。また地域ごとに宿主からの選択圧を解析した結果、日本と中国では大きな差が見られなかったが、台湾においては他の地域と比べて選択圧が2-4倍高いことが明らかとなり、以上の結果から地域によって宿主からの選択圧が異なることが明らかとなった(投稿中)。
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