ショウジョウバエのmethoprene-tolerant遺伝子産物(MET)を中心に、幼若ホルモン(JH)シグナリング経路に関連すると思われる数種の転写因子の解析を行ない、MET非依存性のJHシグナリング経路の存在を示唆する結果を得た。 1.METとおなじくbHLH-PASファミリーに属する転写因子、GceとTgoのcDNAクローニングを行ない、これら3因子からin vitroでタンパクを作成し、ランダムな部分を含む75merの2本鎖オリゴDNAに対して種々のタンパクの組み合わせでゲルシフトアッセイを行ない、METの結合配列の濃縮を行なった。数ラウンドの濃縮の後、特定の転写因子の組み合わせでのみ有為に増幅されるオリゴDNA集団を得た。 2.蚊のダイオキシンレセプターホモログを構成するAhrとArntを用いたレポーターアッセイを行ない、a)JHに反応したダイオキシン応答配列(XRE)を持つレポーター遺伝子からの転写をAhrの発現が有為に増強すること、b)AhrはJHを結合しないこと、c)AhrはXREに結合しないこと、d)METの発現はこの系に影響を及ぼさないことを確認した。以上から、METに依存しないJHシグナリング系の存在が示唆された。 3.蚊の新規核内レセプター(NR)を用いたレポーターアッセイを行なった。C.fumiferanaのJH水解酵素遺伝子調節領域で見いだされたJH応答配列とされる配列を用いたところ、NRの発現によりレポーター活性が穏やかに上昇することが観察された。さらにNRの発現はS2細胞でのエクダイソンシグナリングを阻害することを明らかにし、NRは同じ核内レセプターファミリーに属するエクダイソンレセプタータンパクあるいはUSPタンパクと相互作用することが推察された。 4.クローニングした新規因子のデータベースへの登録を行なった。
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