研究概要 |
本研究は、トノサマバッタの地理的・季節的適応様式を明らかにするために、中国大陸に分布する個体群の生活史の解析と休眠特性を調べ、地理的・季節的適応様式を解明するのが目的である。予定していたAltay(47°N),Liaoning(40.7°N),Tianjin(38.8°N),Shandon(35.4°N),Henan(34.8°N),Funan(31°N),Hainan(20°N)のうち、Funan(31°N)を除くすべての系統の確立に成功した。Funanでは、3日間河川敷などで採集を試み、近似種のクルマバッタの生息は確認できたが、トノサマバッタは採れなかった。前年度にすでに入手していた系統については、休眠性と環境要因(光周期と温度)の影響について調べたので、残りの系統について、18年度に実験を行う。Hainan系統は昨年11月に入手したので、現在休眠性を調査中である。南北勾配に沿って、4系統を選び、それらの間での正逆交配を行うことにより、遺伝的親和性と休眠制御に関する情報を現在取得中である。日本(沖縄)系統との遺伝的親和性に関する実験では、中国の系統との正逆交配を行い、最北のAltay系統との間で得られた卵において、他の組み合わせには見られなかったような高い死亡率と極めて低い受精率が観察され、相対的に低い遺伝的親和性を示唆する興味深い結果を得た。現在、そのメカニズムを解析中である。休眠深度の地理的変異を調べるために、各系統の休眠卵を20℃に置いて観察していたが、6ヶ月目で恒温器が故障して中止せざるをえない状況になった。18年度に繰り返す予定である。 研究所の内部再編により、バッタ飼育体系の維持が困難になった。具体的には、バッタ研究の前提条件であった飼育担当の非常勤職員3名の雇用費がすべてカットされた。要望書等の提出により交渉を続けてきたが、賛同が得られず、17年度末で解雇せざるを得なかった。残念であるが、できるだけ本研究課題の遂行には著しい支障がでないよう努力する覚悟である。
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