家畜排泄物に含まれる有機窒素成分は、土壌に散布されると土壌生物の作用によって化学変化を受ける。東北地方の黒ボク土採草地に散布された乳牛スラリーに含まれる窒素の微生物学的変換を化学組成(アンモニア態と硝酸態窒素)と窒素同位体自然存在比(δ^<15>N)の経時的変化に注目して解析した。乳牛糞尿の主な有機態窒素である尿素とその代謝物のほとんどは、密閉式地下タンクに貯蔵中にアンモニア態窒素に加水分解された。平均気温が低く地温が低い条件下では、アンモニア態窒素の硝化が大きく遅れた。一方、平均気温が高い条件下では、硝化は促進された。硝化に続く脱窒過程は、硝酸態窒素含量の急激な減少と同時に起こった残存硝酸態窒素中のδ^<15>N値の上昇によって示された。このような過程は黒ボク土の高水分保持特性と草本植生からの有機物の十分な供給が組み合わされることによって促進されると推定された。
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