研究課題
岐阜県御嶽山、青森県岩木山、秋田県田沢湖町において土壌調査と試料採取を行った。御嶽山、岩木山土壌から採取された菌核試料についてAMS加速器法により、14C年代測定を層位別、粒子サイズ別に行った。また、妙高土壌を用いてCEGFクロロホルム抽出の腐植酸緑色画分について年代測定を試みた。その結果、CEGFは有機溶媒の影響により、年代値を得ることができなかった。また、菌核粒子の年代と粒子サイズとの明確な関係は見出されなかったが、小さい粒子の方が若い年代を示す傾向がみられた。その理由として、表面積の大きさに比例して外部の新しい腐植物質の影響が大きくなる可能性が示唆された。菌核粒子の年代は御嶽山表土で600-900yr.B.P,B層で2000-3000yr.B.Pの年代値が得られた。この値は申請者らが妙高山の埋没土を対象として得られた年代値(1200年)よりも古く,現表土における菌核粒子の滞留時間が3000年と長いことが明らかとなった。さらに、菌核粒子の炭素含量と年代との関係をみたところ、菌核粒子の炭素量が半減するのに約15,000年、炭素分解速度として5.0×10-5g/kg・yearが求められた。実際には、1万年を越える年代の菌核粒子は検出されていないことから、菌核粒子の消滅は、内部に生息する微生物による炭素分解という化学的消滅と、構造体としての耐久性を失うことによる物理的消滅の2つのプロセスが考えられた。そこで、御嶽山の菌核粒子を対象として、内部に生息する細菌群集の構造解析を非培養法で行った。その結果、菌核粒子内部の微生物群集は、菌核粒子の外界環境である土壌の微生物群集より多様性に富むこと、還元的脱塩素化が報告されているDehalococcoids sp.などのクローンが検出された。これまでに、申請者らの研究により、菌核の元素分析において塩素がしばしば検出され、かつキノン系土壌色素である腐植酸Pgの構造としてCameron and Sidell(1978)は塩素系多環芳香族化合物を示唆している。また、申請者らは既往研究で菌核内部には芳香族化合物を資化するSphingomonus sp.を検出している。これらのことからこうした内部生息細菌が菌核構造の化学的消滅プロセスに関与していると考えられる。菌核粒子の物理的消滅プロセスについては、接触荷重による強度試験装置を独自に設計し、菌核の構造強度と各種パラメータとの関係を調べる実験に着手した。これらの結果はまだ公表するに至っていない。
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Soil Science and Plant Nutrition 53
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