研究概要 |
発光細菌P.leiognathiは、4種類の異なる宿主に共生する共生発光細菌である.この細菌が宿主に応じた分化をとげていることは,我々の研究ですでに明らかになっている.この申請では,4種類の宿主との共生により分化しつつあるP.leignathiを用いて,そのゲノム構造や遺伝子の変異を解析することにより、現在の細菌の種の定義を再検討することを目的としている。今年度の研究内容およびその結果は下記のとおりである. 1)供試菌の収集 4種類の宿主の分離菌株のうち,供試菌株数が少なかったケンサキイカの共生細菌を分離した.ケンサキイカは壱岐漁港からの直送空輸便で入手した.漁獲シーズンである6,7,8月に分離を試み,ケンサキイカ発光器から合計75株を分離し,保存した. 2)遺伝子の分子遺伝学的解析 昨年度解析を行なったgyrB (DNA gyrase B subunit)に加え,gapA (Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)、ftsz (Cytoskeletal cell division protein)、mreB (Actin-like cytoskelton subunit B)、topA (topoisomerase)遺伝子も対象に解析をすすめた.それぞれの遺伝子に対応したプライマーを設計し,遺伝子配列を決定した.得られた個々の遺伝子で作成した系統樹では,gyrBと同じく,宿主による特徴的な違いは見られなかった.これら5遺伝子の遺伝子配列は,4宿主から分離されたP.leiognati間の違いを検出するには保存性が高すぎるという結果となった.今後は,得られたすべての遺伝子配列を連結して解析できるMLST解析やスピリット解析を行ない,4種類のP.leiognathi間の違いの程度を明らかにする.得られた結果をふまえ,細菌の種の定義を再検討する.
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