研究概要 |
二酸化炭素を回収し積極的に有用物質に変換する分子変換技術の確立が切望されている。本研究において、芳香族カルボン酸脱炭酸酵素の炭酸固定活性を明確にし、芳香族カルボン酸の生産への応用を検討した。 4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を有する微生物を探索し、高活性菌として通性嫌気性菌Enterobacter cloacae P240を選択し、4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素が精製単離した。精製酵素は炭酸固定反応を触媒し、20mMのフエノールから3mMの4-ヒドロキシ安息香酸を生成することを明らかにした。遺伝子解析の結果、本脱炭酸酵素は既に報告されている絶対嫌気性菌Clostridium hydroxybenzoicumの酵素と一次構造において53%の相同性を示した。50%以上の相同性を示した。高度に保存されているモチーフ配列を明らかにした。 新規酵素2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素をAgrobacterium tumefaciensとPandoraea sp. 12B-2に見出した。両菌株からそれぞれ2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素が精製単離した。両酵素は安定性が高かった。これまで報告されている芳香族カルボン酸脱炭酸酵素で高度に保存されているモチーフ配列がこれらの酵素には存在せず、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は新しいタイプの脱炭酸素であった。 薬品、化成品の原料として有用な2,6-ジヒドロキシ安息香酸をPandoraea sp. 12B-2の炭酸固定活性を用いた生産条件を検討した。3M KHCO_3と3M1,3-ジヒドロキシベンゼンを添加し、密閉容器内で炭酸固定反応が行い、1.43M(220mg/ml)の2,6-ジヒドロキシ安息香酸の蓄積を認めた(モル変換率は48%)。また、超臨界二酸化炭素条件下で炭酸固定反応が進行することを確認した。
|