研究概要 |
ハイテク製品に広く用いられている希土類元素の生体影響を明らかにする一端として,微生物を対象に希土類元素応答微生物の探索を行ってきた。本研究ではEu存在下でコロニー径が大きくなった3菌株(EU-1,EU-2,EU-3)の増殖特性について研究を進めた。EU-1株(Methylobacterium属)はメタノール含有平板培地ではSmのみによって増殖が促進され,液体培養ではメタノール含有培地でSmの添加により10倍程生菌数の増加が認められた。本菌株のメタノール代謝にSmが密接に関わっていることが示された。EU-2株(Nevskia ramosa)は軟寒天培地ではEu存在下で大きなコロニーを形成することから,Euが本菌株の運動性に関わっていることが示唆された。また,液体培養では,Euの添加により生菌数が20倍程増加したが,Eu無添加培地では生菌数に大きなバラツキが観察された。この原因がEu無添加時には細胞が5〜10個凝集し菌塊を形成しているためであることが分かった。EU-3株(Sphingomonas属)は,定常期に達すると直ちに死滅期に入り生菌数が急激に減少したが,Laを添加すると定常期が長く維持されることが認められ,Laが本菌株の生命維持効果を有することが分かった。Methylobacterium sp.EU-1株をLa(Ce)添加メタノール含有培地で培養すると,メタノール脱水素酵素活性の著しい上昇が認められた。これはLa(Ce)の添加により本酵素量が増加したためであった。本酵素のN-末端アミノ酸配列の相同検索を行ったところ,PQQ-依存性アルコール脱水素酵素ファミリーの一員であることが明らかとなった。 これら一連の研究成果は微生物における希土類元素の重要性をIn vivo及びIn vitroのレベルで指摘したものであり,生物無機化学分野に大きなインパクトを与えるものである。
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