本研究ではAspergillus nidulansのprotein-O-mannosyltransferase(pmtA)遺伝子破壊により、細胞形態に異常をもたらす要因を探るため、pmtAの標的タンパク質を推定した。また、O-マンノシル化による糸状菌の細胞増殖の制御についての知見を集積した。具体的には以下の3項目について知見を得た。 1.二次元電気泳動法によるpmtAの標的タンパク質の推定。野生株及びpmtA破壊株のタンパク質を細胞壁画分、膜画分、細胞質画分へと分画し、それぞれ二次元電気泳動にて分離した。その結果、細胞質画分では両菌株間由来のタンパク質に相違は認められなかったが、細胞壁及び膜画分において、野生株に特有に検出されるタンパク質、pmtA破壊株に特有に検出されるタンパク質が多数認められた。細胞壁画分から野生株にのみ検出されるタンパク質のうち5つの同定を行った。その結果、いずれもこれまでに機能について報告のないタンパク質であった。 2.細胞壁ストレスセンサータンパク質WSCタンパク質の機能解析。A.nidulansゲノムDNAを鋳型としてPCR法によりS.cerevisiae WSC1及びWSC3に相同性を示すA.nidulans WSCオーソログAN4674及びAN5660を増幅し、タグを付加した同遺伝子の発現用ベクターを構築した。野生株に導入し、ウェスタン解析により、同タンパク質が発現していることを確認した。さらに、両遺伝子の破壊ベクターを構築し、A.nidulans KU80変異株を宿主として導入し、形質転換体を取得した。 3.pmtB及びpmtC遺伝子の機能解析。A.nidulans pmtAのパラログであるpmtB及びpmtC遺伝子の機能を調べるため、pmtB破壊株及びpmtC破壊株を構築した。これらの菌株では菌糸伸長や分生子形成能に欠陥が認められた。
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