研究概要 |
本研究ではAspergillus nidulansのO-グリコシル化による糸状菌の細胞増殖の制御についての知見を集積し、糸状菌におけるO-グリコシレーションの機能解明を試みた。 1)PmtA(Protein O-mannosyl transferase)の標的基貿タンパク質細胞壁ストレスセンサー(WSC)の機能解析.WSCをコードするwscA及びwscBにタグを付して発現させ、局在解析を行なった。その結果、両Wscとも細胞膜に局在し、O-結合型糖鎖付加されていた。ついで両遺伝子の破壊株を構築した。wscB破壊株では野生株と表現型の差異は認められなかった。一方、wscA破壊株では低浸透圧、高温、及び細胞壁合成阻害剤に対し高感受性が認められた。従って、wscAの表現型はpmtA破壊株の表現型の一部と極めて類似していた。以上の結果から、pmtA破壊による標的WscAの非グリコシル化による機能低下がA.nidulansの異常な生育をもたらす要因の一つであると推察した。 2)pmtB及びpmtCの機能解祈.A.nidulansにはpmtA以外に2つのpmt遺伝子が存在する。pmtB及びpmtCの破壊株を構築し、それらの形態的特徴を明らかにした。pmtB破壊株では、菌糸伸長能に影響はなく、菌糸の分岐度が増大した。pmtC破壊株は、親株に比ベコロニー形成が著しく遅く、分生子形成が不能となった。高浸透圧条件下でコロニー形成速度は部分的に回復したが、分生子形成能は回復しなかった。菌糸は、全ての部位で膨らんだ異常構造であった。すなわち、pmtA, pmtB, pmtC破壊株の表現型は互いに異なっており、PmtA, B, Cが異なる標的基質タンパク質に作用していることが示唆された。pmt破壊株では、分泌タンパク質がO-結合型糖鎖付加されないことで、本来の機能を発揮できなくなり、生育に負の影響を及ぼすものと推察した。
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