研究概要 |
研究の最終目標はBacillus subtilis, Corynebacterium ammoniagenesおよびE.coliの3種細菌のプリンヌクレオチド(例:IMP)やプリンヌクオシド(例:イノシン)生産における潜在能力を明らかにすることである。そのために解糖系およびペントースリン酸系における代謝フラックスの解析、糖の取り込み機構、プリンヌクレオチドやプリンヌクオシド透過機構の分子レベルでの解析を行っている。 現在までに得られている成果は以下の通りである。 1.Bacillus subtilis, Corynebacterium glutamicumおよびE.coliの3種細菌のプリンヌクレオチド生合成経路への代謝フラックスの特性を明らかにする目的で解糖系とペントースリン酸系の分岐に関わるGlucose-6-phosphate(G6P)isomeraseとG6Pdehydrogenaseの酵素化学的パラメーターデータを取得した。また、細胞内のG6P isomeraseとG6P dehydrogenase量とともにG6P量も測定した。これらのデータを総合的に解釈して、プリンヌクレオチド生合成経路への代謝フラヅクスに有利な細菌の順位付けを行うとBacillus subtilis > Corynebacterium glutamicum > E.coliとなった。 2.E.coliを用いて、すべて遺伝子工学的手法による変異育種を行い、イノシン生産能力を評価した結果、E.coliは固有のプリンヌクレオチド生合成系に関わる代謝変異のみではイノシン生産性は極めて低いことが判明した(対糖収率2.5%)。さらに解糖系の遮断やエントナー・ドドロフ系の遮断によって糖代謝変異株を育種することによりイノシン生産性を向上することができた。また、イノシン分解に関わる酵素が3種以上あることが示唆され、この酵素類の存在もまたイノシン生産性と強く関連することが分かった。
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