DNAポリメラーゼIをコードするpolAは、そのパラログであるypcP(5'→3'エキソヌクレアーゼホモログ)との組み合わせで合成致死になることを明らかにした。DNAポリメラーゼIは複製時に岡崎フラグメントのプライマーRNA除去という重要な機能を持っているにも関わらず、大腸菌において欠損できることから何らかの代替機能が示唆されてきたが、この必須機能パラログの発見によりこの二者が持つ5'→3'エキソヌクレアーゼドメインが必須機能であることが明らかになったと考えられる。大腸菌においてもypcPホモログであるxniが存在し、polAとの合成致死を示した。さらに、ypcPホモログを持たないシアノバクテリアではpolAが破壊できない必須遺伝子であることも確認し、生物全体で共通の必須機能であることを示唆した。 また、RNase HはDNAポリメラーゼIと同様にプライマーRNA除去に関わることが知られている。枯草菌ゲノムにはRNase Hをコードすると考えられる遺伝子が4種類見出されている。しかし、活性が確認されているのは2種類のみであり、その二重破壊は合成致死となる報告があったが、本研究での追試実験ではコロニーは小さいものの生育可能であり、温度感受性やフィラメント状の表現型を示した。さらにRNase Hの四重破壊株、polAを含む五重破壊株が得られたことから、RNase Hは最終的に非必須機能であると判断できた。そして、フィラメント状の表現型はSOS応答時に発現するyneAの構成的発現によることがlacZリポーターアッセイにより証明できた。さらに、フィラメント状の表現型を示すRNase Hの三重破壊株にPolA、YpcP、新規RNase HIホモログのYpePのいずれを過剰発現させてもフィラメント状の回復が見られた。以上のことから、YpePが新規RNase Hであること、PolAとYpcPの持つ5'→3'エキソヌクレアーゼ活性はRNase H機能を部分的に相補できることが示唆された。
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