本研究は植物根面を対象として、特に主として利用する窒素形態の異なる植物種(好アンモニア態窒素性:イネ、ブルーベリー等、好硝酸態窒素性:オオムギ、ナス等)の根面における硝化細菌の分布を解析し、優占種の確定を行うことを終局目的とした。現在アンモニア酸化菌のDGGE等の手法をはじめとする非培養系解析には、16SrRNA遺伝子由来のCTOプライマーをアンモニア酸化菌に固有のアンモニアモノオキシゲナーゼ(AMO)遺伝子の特定領域由来プライマーが汎用されている。本研究では硝化細菌に適応するこれら以外の、より有効で高解像度のプライマーの探索ならびにより効率の良い解析の確立を試み以下の成果を得た。 【研究実績】 (1)硝化細菌スクリーニングのための特異的プローブの検討:亜硝酸酸化菌に特有なエネルギー獲得系主幹酵素である、亜硝酸酸化還元酵素の遺伝子norBについて検討し、Nitrobactor属内の細密な分類の可能性を示した。アンモニア酸化菌においてはグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ(PYK)の導伝子であるgap、pgk、pykについて検討し、16SrRNA遺伝子では識別し得ないNitrosospira、Nitrosolobus、Nitrosovibrioの3属を高感度で分類することを可能にした。 (2)植物根面における硝化細菌の分布状態の解析:前項を踏まえ、DGGE解析に応用すべく、プライマー設計を検討中である。 (3)新規分離株の分離同定およびその育種、機能解析:平板培地のゲル化剤にゲランガムを用いた分離法を用い、植物根面環境由来物の調製法により得られた分離源より、独立栄養性のアンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌の純粋分離を行い、イネ、ブルーベリー(好アンモニア態窒素性)、オオムギ、ナス(好硝酸態窒素性)に対象を絞り、分離株を獲得した。特にタイの酸性硫酸塩土壌に生息するギンネム(好硝酸態窒素性)根面より分離したアンモニア酸化菌は、高いウレアーゼ活性や銅耐性を示し、機能解析の対象として有用な菌株を得るに至った。
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