分生子形成様式は酵母を含む菌類の属以上の高次分類の指標として用いられている形態学的形質の一つである。しかしながら、近年の系統解析の結果から本形質、特に射出胞子系性能については系統関係を必ずしも反映しないことが示されている。そこでこれらの分類学的評価のため、本課題の目的は特に分生子形成を促進する方法を開発することである。平成15-16年度基盤研究(C)(2)15580071において行った実験から培地中の水分が射出胞子の形成に影響を及ぼすことが示されたため、本年度は温度ストレスについて実験を行った。射出胞子形成酵母Bullera oryzae JCM 5281を用いた実験では明らかに射出胞子の形成は促進された。また、過去に射出胞子の形成が観察されているが、現在は胞子を形成しないといわれているUdeniomyces puniceusでは、JCM 1535を用いて温度条件を検討したところ、培地上にサテライトコロニーを観察した。本酵母に関しては胞子を捕集・観察することはまだ行われていないが、母細胞と娘細胞の間にsterigma様の構造物が見られたため、射出胞子形成のprimitiveな段階が得られたのではないかと推測している。今後温度と分生子形成の関係について、さらに顕微鏡観察を行った後、遺伝子の網羅的解析を行う予定である。なお、子嚢菌系不完全酵母であるCandida thermophila JCM 10994では、やはり培養温度を検討することにより子嚢胞子を観察することができたため、さらに詳細な検討の後、完全時代として報告する予定である。
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