研究概要 |
本申請研究は,糖質加水分解酵素α-グルコシダーゼとその関連酵素を利用して,α型オリゴ糖の合成に適した新たなグリコシレーションテクノロジーの開発を目的とする.開発技術は具体的に次の2点,1)酵素の糖転移酵素化,2)特異性の改変,である.第1点により効率的なオリゴ糖合成マシーナリーを獲得し,第2点により合成オリゴ糖を多様化できる.これまでの進捗・結果は以下の通りである. 1.転移酵素化:(1)枯草菌由来オリゴ-1,6-グルコシダーゼ,Streptococcus mutansデキストラングルコシダーゼ,オオムギα-アミラーゼなどの酵素の,触媒に必須であり高度に保存されたアミノ酸残基の改変酵素を作製した.これらは,通常の加水分解活性を極わずかにしか示さない.(2)フッ化グルコース(α型,β型ともに)およびα-フッ化マルトースを有機合成した.(3)反応条件を検討し,最適化した.これにより,一例として,α型フッ化グルコースとマルトースから,高収率で三糖パノースを合成するシステムを開発した.野生型酵素で収率16%に対して,本システムでは71%と高い収率を示した.また,本システムに使用する変異酵素は加水分解活性を示さないので,安定的に高収率を得られる. 2.特異性の改変:糖受容体となる基質の特異性改変の前段階として,研究計画に従い加水分解反応での基質特異性を改変した酵素を作製した.例として,デキストラングルコシダーゼの基質の鎖長特異性の改変,および野生型では専らα1,6結合に作用する酵素を,部位特異的変異導入によりα1,2結合やα1,3結合水解活性を著しく向上させることに成功した.
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