1.細胞老化誘導因子の機能評価 ヒトテロメラーゼ抑制因子として申請者らが同定したTGF-β activated kinase 1(TAK1)およびProtein kinase C-δ(PKC-δ)の細胞老化誘導能を評価した。その結果、TAK1は細胞老化を誘導するばかりでなく、ヒト正常線維芽細胞(TIG-1)の分裂老化の局面において活性化されることが明らかとなった。さらに外来因子およびTAK1を活性化しうる炎症性サイトカインが、TAK1の活性化を通じてTIG-1に細胞老化を誘導しうることを明らかにした。以上の結果から、TAK1は細胞老化プログラムにおいて重要な機能を果たしているものと考えることができた。さらにPKC-δは分裂老化およびストレス誘導性細胞老化の局面において活性化されていることが明らかになるとともに、阻害剤およびsiRNAを用いた解析から、PKC-δが細胞老化表現型の誘導において必須な役割を担っていることが明らかとなった。以上の結果から、ヒトテロメラーゼ抑制因子として同定したTAK1およびPKC-δはともに細胞老化プログラムを規定する重要な因子であることが明らかとなり、アンチエイジング創薬のターゲット分子としての可能性が推察された。 2 カロリー制限による延命の分子基盤の解明 カロリー制限に伴う延命に関わる因子として最近脚光を浴びているSIRT1に焦点を当て、カロリー制限とそれに伴うSIRT1の活性化・発現増強のメカニズム解明のためのin vitro解析システムの構築を行った。まずヒトSIRT1プロモーターを取得し、ルシフェラーゼ遺伝子の上流につないだベクターを構築し、SIRT1プロモーターの転写活性化機構解析のためのシステムを構築した。その結果、血清及びグルコースを除去した培地にて1日培養することで、SIRT1プロモーター活性が増強されることがあきらかとなり、in vitroにおいてSIRT1の転写活性化機構を解析するためのシステムとして利用可能であることが明らかとなった。
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