研究概要 |
本研究では、我々がイネアクチベーションタギングにより単離したアシルトランスフェラーゼ相同遺伝子(OsAT1)の属する遺伝子ファミリー(OsATファミリー)と病害抵抗性の関連について、分子遺伝学的及び生化学的に解明することを目的とする.本年度の実績は以下の通りである。 1)Avirulentないもち病菌(Kyu 77-07A、レース102.0)を感染後1,2,3日のイネ(日本晴)よりRNAを調製し、OsATファミリーメンバーの全て(14種類)に特異的なプライマーを用いてReal-time PCRを行ったところ、OsAT15及びOsAT18の顕著な転写誘導が認められた。3日目において共にコントロールの約1000倍に誘導された。OsAT18は系統樹ではOsAT15と最も近縁なメンバーであった(Identities:84.9%,Similarities:93.5%)。なおこれら以外のファミリーメンバーでは顕著な転写誘導は認められなかった。 2)いもち病菌感染特異的な誘導の見られたOsAT15をイネ発現ベクターに連結し、アグロバクテリウム法で50個体以上の過剰発現イネを作製し種子を採取した。 3)OsAT15のWTイネにおける組織別の発現をReal-time PCRで調べたところ、発現量は幼穂で最も強く、葉鞘で弱く発現しており、葉身、穂、根ではほとんど発現していなかった。 4)OsAT1過剰発現体は擬似病班を示すと同時に病害抵抗性になることを既に示していたので、ジャスモン酸(JA)生合成系が活性化しているかどうかについて調べた。ベーサルレベルのJA量は非常に少ないため、傷誘導によるJA蓄積量にWTと差があるかどうかLC-MS/MSで測定したところ、顕著な差は認められなかった。
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