ほ乳類ゲノムの解析からシグナル分子であるペプチドホルモン(ET-2/VIC)を発見して、その構造と機能の解析を行ってきた。生物活性として、血圧上昇、腸管平滑筋の収縮活性、等、多彩な機能を持つ。基本(物質)特許は実用化され、化学合成ホルモン(ペプチド)が販売されている。遺伝子の発現解析により、乳腺や脳下垂体や皮膚においてペプチド遺伝子の発現や(BBRC'02a、BBRC'02b)、受容体の遺伝子発現も見出した(BBRC'03)。しかしながら、ET-2/VICは、活性ペプチドET-1とアミノ酸配列が酷似しているために、特異性高い抗体が開発できていない。ET-1に関しては、精力的な研究が国内外で行われているが、ET-2/VICに関しては、特異性高い抗体が無い為に、研究の進展は遅々としている。そこで、(1)ペプチドのアミノ酸配列の差を識別するための新しい抗原分子を合成した。これをラビットに免疫し、抗体価の上がった抗血清を取得した。抗血清から特異的抗体を取得するために種々の精製法を試み、ET-2/VICに特異性が見られた抗体を取得した。この抗体を用いて、動物の組織において、本ペプチドの特異的検出や局在を解析した所、皮膚や皮膚細胞やPC12細胞において、ペプチドの発現が検出できた。げっ歯類VICに対する活性が高く、ヒトET-2に対する活性は低かった。よってこの抗体は、げっ歯類に有効と思われた。(2)ET-2/VICの機能を細胞レベルで解析するためには、特異的に遺伝子発現を抑制する方法の確立が重要である。ET-2/VICのsiRNAを取得するために、ET-2/VICのcDNAを種々のソフトで解析して、siRNAの候補に成り得るdsRNAを数種合成した。そのdsRNAのmRNA発現を抑制する活性を測定した所、若干の発現低下は見られたが、本遺伝子の発現抑制活性は不十分であった。より高効率で遺伝子発現を抑制できるsiRNAを設計・合成できれば、ET-2/VICの遺伝子発現の生物(生理)機能が解析できる。
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