研究概要 |
我々は、イネ(Oryza sativa)においてジベレリン生合成に関与するOsCPS1とOsKS1以外にもフィトアレキシン生合成に関与するジテルペン環化酵素遺伝子をB型で2種(OsCPS2、OsCPS4)、A型で4種(OsKS4、OsKS7、PsKS8、OsKS10)、特定したが、これらのホモログはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)には存在しない。そこで、進化的な見地から、同じイネ科植物のコムギ(Triticum aestivum)について同ホモログを探索したところ、B型、A型ともに3種ずつのパラログが存在した。B型についてはTaCPS1〜3全てはent-CDP合成酵素をコードしたが、発現解析と系統樹分析によるとTaCPS3はジベレリン生合成に関与し、他の2種はOsCPS2とOsCPS4のホモログではあるものの、オーソログとは考えられなかった。A型については、TaKS1の組換え酵素はsyn-CDPを9β-pimara-7,15-diene様物質に変換し、モミラクトン生合成遺伝子OsKS4のホモログと考えられた。以上の結果により、イネのフィトアレキシン生合成に関与する環化酵素遺伝子の先祖遺伝子は少なくともイネ科植物には存在することが示唆された。さらに、我々は、イネのジテルペン系フィトアレキシンの生理的・病理的役割を追究するために、OsCPS2、OsCPS4、OsCPS2+4、OsKS4、OsKS7をRNAiによりノックダウンするためのプラスミドを構築し、イネの培養細胞に導入した。今後は、ノックダウン体の特徴付けを行う予定である。
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