研究概要 |
植物は病原菌の感染を受けると様々な防御応答を発現する.特にファイトアレキシンなど抗菌性化合物の生産や蓄積に関わる二次代謝は大きく変動する.植物はあらかじめ様々な二次代謝産物を蓄積しているが,あるものは病原菌の感染をうけると増大し,あるものは減少する.病原菌の感染時に減少する化合物の中には細胞壁に取り込まれて,その強化に関わっているものもある.このような二次代謝産物を同定するために,モデル植物であるシロイヌナズナの二次代謝産物の分析を行い.その構造を解析した.シロイヌナズナの種子を無菌的にMS培地上に播種し,2週間後の植物体を地上部と地下部に分けて,メタノールで抽出した.得られた抽出物を逆相系のカラムクロマトグラフィーによって分画した.得られた画分から分取HPLCによって主要なピークを精製した.さらに精製したピークをLC/MSおよびNMRスペクトルによって分析し,その化学構造を決定した.地上部からは,3種のインドールグルコシノレート,2種のフェニルプロパノイド,3種のフラボノイド配糖体を得た.一方,地下部からは地上部において同定した化合物に加え,2種のフェニルプロパノイドと1種のフラボノイドを同定した.これらの化合物を標品としてのHPLCでの分析定量方法を確立した.この方法を用いて,病原菌が感染したシロイヌナズナにおける化合物の蓄積量の変動を調べた.これらの化合物のほとんどが感染を受けた葉で減少する傾向を示した.これは,これらの化合物が細胞壁に取り込まれている可能性を示唆する.また,シロイヌナズナのファイトアレキシンであるカマレキシンを化学合成によって調製し,これを標品として分析を行った.カマレキシンは接種後顕著に誘導された.今後,これらの化合物の細胞壁への取り込みを明らかにするため,細胞壁画分の抽出法の検討と分析を行う.
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