研究概要 |
吸器形成過程の根寄生植物ストライガの種子およびストライガの寄生を受けた宿主植物ソルガムにおいて顕著に発現が高まる遺伝子を、サブトラクション法を用いて単離した。 発芽させたストライガ種子を2,6-DMBQで処理して吸器を誘導し、この過程で発現する60遺伝子から顕著に発現が高まる8遺伝子を、quantitative RT-PCRにより選抜した。しかしながら、既知遺伝子との相同性検索に基づく機能の推定には至らなかった。 親和性のオロバンキと非親和性のストライガを接種したマメ科モデル植物ミヤコグサにおける、応答性の遺伝子を探索した。サブトラクションによりオロバンキの寄生に応答する遺伝子を116、ストライガの侵入に応答する遺伝子を88単離し、発現解析によるポジティブクローン選抜により特異的に発現する遺伝子を前者で66、後者で73選抜した。オロバンキの寄生、ストライガの侵入に共通して、ジャスモン酸合成、PRタンパク質、活性酸素の解毒に関わる遺伝子が高発現した。ファイトアレキシン合成に関与する遺伝子はストライガの侵入で特異的に発現し、アミノ酸合成、細胞分裂に関わる遺伝子がオロバンキの寄生で特異的に発現した。また、機能は未知ではあるが根粒菌の共生で発現するESTおよび根粒菌の接種で発現することが知られている遺伝子と高い相同性を示す遺伝子が前者では18、後者では8含まれていた。これらのことから、ミヤコグサ根はオロバンキの寄生に対しては共生に関わる応答を、ストライガの侵入に対しては生物的ストレス応答を示すことが示唆された。両者で共通して発現した遺伝子は1つしか見出されなかったことから、根寄生植物の寄生、侵入に対して宿主植物は分子レベルで特異的に応答していると考えられた。
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