研究概要 |
食肉の生産過程で種々の副生物が生じる.これらは加熱処理後に肥料等に利用されているが多くは廃棄されている.しかし,加熱処理された副生物中には変性タンパク質が豊富に存在している.これら熱変性タンパク質はレジスタントプロティンと称し,投与された宿主の腸内細菌叢の正常化や活性化につながる可能性が高い.そこで食肉副生物の安全性と機能性を探求するために,ラットを用いた生体作用機序の一つである脂質代謝への影響を探求した. 動物性タンパク質源として,牛アキレス腱,牛動脈,牛第1胃を湯煎し脱脂したものを用いた.アキレス腱及び動脈の一般成分のうち約80%がタンパク質で占めており,アミノ酸構成比はグリシン及びプロリンが主成分であった.動物実験では8週齢のF344系雄ラットを4週間20%カゼイン食と,カゼイン5%の代わりにアキレス腱及び動脈タンパク質5%を含む食餌を経口投与した.肝臓,盲腸、糞便のステロール,胆汁酸,短鎖脂肪酸はガスクロマトグラフィーにより同定・定量.血清成分は酵素法により,肝臓中のコレステロール代謝に関わるmRNA発現はRT-PCR及びサザンブロット法により測定した. その結果,摂取量及び体重には各投与区間で有意な差はみられなかった.血清脂質では牛アキレス腱,牛動脈では血清総コレステロール及びVLDL+IDL+IDL-コレステロール濃度は動脈投与区で上昇抑制が見られ,中性脂肪濃度は両試験区で有意に低下した.しかしながら牛第1胃では血清脂質に対照区と比較して差はみられなかった.肝臓の脂肪酸合成酵素mRNA発現量は牛アキレス腱,牛動脈投与区で有意に低下し,盲腸内腸内細菌叢,特に一般嫌気性菌及びビフィズス菌は増加する傾向がみられた.しかしながら牛第1胃投与区では差はみられなかった.以上の結果より,アキレス腱及び動脈タンパク質は腸内細菌叢を活性化させ血清脂質を低下させる可能性が示唆されたが,第1胃タンパク質ではその機能性は確認できなかった.しかしながら,食としての安全性は確認できた.得られた成果についてはBritish Journal of Nutritionに論文が掲載された.
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