茶カテキンが有する健康維持・増進作用の中で、新たに抗肥満作用が知られるようになった。今回本研究では、茶以外のポリフェノール素材、特にリンゴあるいはホップ由来ポリフェノールのようなプロアントシアニジン類を主成分とするポリフェノールの標題生理機能について調べた。すなわち、肥満を誘導させる高脂肪(脂肪を約30%添加)含有飼料を4週齢の雄ラットに摂取させる系において、緑茶(TC)、りんご(AP)、ホップ(HP)由来の各ポリフェノール素材を配合し、各群につき脂質代謝調節作用ならびに抗肥満効果を比較検討した。各群間で摂取量に差が生じないように2ヶ月間飼育した後、肥満ならびに脂質代謝に関わる種々の因子を解析した。その結果、高脂肪飼料摂取群は、通常の低脂肪飼料摂取群よりも睾丸周囲、腎臓周囲および腸間膜の脂肪組織重量は著しく増大したが、高脂肪飼料と共に各ポリフェノール素材を同時に摂取した群では、各部位の脂肪蓄積量が低下し、総脂肪組織重量は各ポリフェノール素材摂取群の方が非摂取群よりも有意に低くなった。また、高脂肪飼料摂取により誘導される血清アディポネクチン(脂肪細胞から分泌される糖尿病や肥満を抑えるホルモン)の減少に対する各ポリフェノール素材の摂取効果は小さかったが、脂肪組織由来のホルモンで摂食抑制およびエネルギー消費亢進作用を示すとされるレプチンの増大、インシュリンの増大に対する抑制効果は高く、その効果はTCとAP摂取で顕著であった。しかし、ヒト肥満ではこれらの作用が低下し、一般的にレプチンレベルは高値になることも知られ、TCとAPの代謝産物はこのような高レプチン血漿を緩和するのではないかと考えられた。さらに、3種類のポリフェノール素材摂取により肝臓の脂肪合成が抑えられ、一方では脂肪分解が促進されることも明らかになった。これらの作用によって、各ポリフェノール素材は脂肪蓄積を抑制すると考えられる。以上の機能に加えて、各ポリフェノール素材は肝臓中性脂肪および血清コレステロールレベルを低下させ、さらには、必須脂肪酸代謝を調節する機能を示した。すなわち、TCに限らず、プロシアニジン化合物を多く含むAPやHPも同じように脂肪蓄積を抑制し、かつ、脂質代謝を良好に調節する健康維持・増進に寄与する素材であることが明らかとなった。
|