研究概要 |
トリアシルグリセロール(TAG)及びジアシルグリセロール(DAG)各1kgを用いてジャガイモ100gを同条件(180℃で5分)、1時間に4回揚げ、これを3時間継続した。フライヤーの上部に簡易ドラフトを設置し、排気をマウス(ICR系雄性)を入れたガラス製容器にフライしている3時間通気した。対照群にはフライ排気を通気しなかった。フライ終了後、3群のマウスから肝臓を摘出し、RNA laterでRNAを粗抽出し、アレイ解析に供した。RNAは、RNeasy Maxi Kitのプロトコルに従って抽出した。マイクロアレイ解析においては、Universal Mouse Reference RNAをReferenceとして使用した。 フライ排気に暴露したマウスの肝臓で、対照群(無処理)に対して発現量が5倍以上多かった遺伝子に着目すると、TAGおよびDAGに共通して、metallothioneinおよびlipinに関わる遺伝子発現が著しく亢進し、その他testis,pancreatic phospholipase,adhesion moleculeの遺伝子発現も目立ち、概ねDG群での発現がより強かった。metallothioneinは重金属汚染以外に環境ストレスに対するバイオマーカーとして有用とされており、とくに過酸化水素などの活性酸素によって誘導されることが報告されており、フライ油中にも微弱化学発光を引き起こす物質が存在しているので、強い酸化的ストレスとなっていることが考えられる。また、リピンは脂質蓄積を促進する遺伝子であり、排気により脂肪肝の誘導が示唆された。DAGとTAGの排気に暴露した両群を比較すると、DAGの方がTGより5倍以上発現量が多かった遺伝子としては、T-cell specific GTPase, proteoglycan 2,histocompatibility 2 class II antigenなど多数あった。DAG群での発現がTAG群よりも発現量の多かったものには、インターフェロンで誘導される遺伝子が目立った。このことは、DAG排気への暴露でインターフェロンの産生がより亢進したことを示唆し、したがって肝臓障害の程度が大きかった可能性がある。
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