トリプトファン代謝の中間代謝産物キノリン酸は、様々な疾病に関与しており、中枢神経系に多量に存在するとNMDAレセプターを介して神経細胞を変性させる。腎臓障害時にも体内のキノリン酸が増加しエリスロポエチンの合成を抑制するという報告もある。 本研究では血液成分等生体内のキノリン酸の量に変化を与える各種食品成分のスクリーニングを行った。たんぱく質、脂質、糖質、食物繊維、オリゴ糖、ファイトケミカル(カプサイシン、ポリフェノール等)、薬剤、環境ホルモン様物質の種類や量、投与期間を変えてラットに投与し、トリプトファン代謝産物への影響を検討した。 その結果、食品成分中では脂質成分、なかでも植物油、ニシン油が大きな影響を与えた。薬剤、環境ホルモン様物質の中では、ペルオキシソーム増殖活性を持つものがキノリン酸の産生を増加させることを明らかにした。そのメカニズムにアミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素の遺伝子発現が強く抑制されることも示した。摂取エネルギー状態を変えた場合では高エネルギー摂取時の方がキノリン酸の産生量が増えることを示した。また糖尿病、肝臓障害、腎臓障害時のトリプトファン代謝の変動について示し、腎臓のアミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素のトリプトファン代謝の役割りについても示した。さらにキノリン酸の産生に大きな影響を与える酵素アミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ラット)のイントロンとエキソン部分を決定した。
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