トリプトファン代謝の中間代謝産物キノリン酸は、様々な疾病に関与しており、中枢神経系に多量に存在するとNMDAレセプターを介して神経細胞を変性させる。そこで、本研究では生体内のキノリン酸の量に変化を与える各種食品成分のスクリーニングを行った。その結果、食品成分中では脂質成分、なかでも植物油、魚油や高たんぱく高多価不飽和脂肪酸食の組み合わせがキノリン酸量を増加させた。さらに薬剤、環境ホルモン様物質の中では、ペルオキシソーム増殖活性を持つものがキノリン酸の産生を増加させることを明らかにした。そのメカニズムにアミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ACMSDと略す)の遺伝子発現が強く抑制されること、および腎臓ACMSDの役割も示した。そして、ラットのACMSDのイントロンとエキソン部分を決定した。一方、ラットの脳、腎臓などにおけるACMSDの役割を調べるためにはその組織局在性の情報が必要である。そこでACMSDmRNAの局在性を、in situ hybridization法で検討した。その結果、脳(糖尿病ラット)においては小脳、海馬の細胞に、腎臓においては糸球体にACMSDmRNAが発現することを示した。ACMSD活性の変動の影響を受けかつ免疫系と関連が深いと考えられているトリプトファン代謝産物ピコリン酸のLC-MSを用いた測定法を検討した。緩衝液、イオン対試薬などの条件を検討した。その結果、緩衝液をリン酸カリウム緩衝液から酢酸アンモニウム緩衝液に代え、イオン対試薬をTetrabutylammonium HydrogensulfateからDibutylammonium Acetateへ変えたことより感度の高い測定法を確立することが出来た。
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