研究課題
本研究課題に関する研究で、平成18年度に得られた主な知見は以下の通りである。(1)血漿ホモシステイン(Hcy)濃度に及ぼす食餌タンパク質の量の影響:Hcyはメチオニン(Met)から生成する動脈硬化危険因子として知られるアミノ酸である。従って、Metを含むタンパク質の摂取量は血漿Hcy濃度にも影響を及ぼすと推定されるが、研究報告は少ない。本研究ではラットを実験動物として用い、食餌中のカゼインおよび大豆タンパク質含量を変化させて血漿Hcy濃度に及ぼす影響と作用機港を解析した。新しく得られた知見は、低タンパク質食を摂取させるとMetの摂取量が少ないにも拘わらず血漿Hcy濃度はむしろ上昇するという事実である(逆に言えば、高タンパク質食の摂取はMetの摂取量が多いにも拘わらず血漿Hcy濃度破堤化する)。その現象の背後には、肝臓でのHcy代謝活性は高タンパク質食摂取で高まり、これがHcyを含めたMet代謝を円滑にするという機構が示された。これらに事実は、血漿Hcy濃度を低値に維持するためには十分なタンパク質栄養の条件が必要であることを示唆している。(2)システイン(Cys)の血漿Hcy濃度低下作用:CysはHcyの類似アミノ酸であり、MetからHcyを経て体内で生成するアミノ酸でもある。本研究では、食餌にCysを添加することにより血漿Hcy濃度を低下させることができるかどうか、もし効果が見られるならばどのような機構によるのかを明らかにしようとした。新しく得られた知見は、低タンパク質食あるいは低Met食にCysを比較的少量(0.3〜0.6%)添加すると血漿Hcy濃度は明確に低下するということである。Hcy代謝に関わる種々のパラメータを測定した結果、次のような可能性が強く示唆された。すなわち、食餌へのCys添加は血漿Cys濃度を上昇させ、これがタンパク質結合型のHcyを減少させ、しいては血漿からのHcyのクリアランスを亢進させて血漿Hcy濃度を低下させるというものである。
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