主に脂肪細胞から分泌されるホルモン様物質であるレジスチンはインスリン抵抗性を引き起こす責任分子として報告されたが、その説を疑問視する研究結果も多く、生理機能をはじめ発現レベル・血中循環レベルの変動とその調節機構に関してはいまだ不明の点が多い。そこで本研究では、まず始めにレジスチンの高感度検出方法の構築を試みた。次に、その方法を用いて高脂肪食負荷時のマウスレジスチン分子の変動パターンを解析し、本分子の変動の生理的意義に関して考察することを目的とした。 マウスレジスチンに対する抗体を作製し、これを用いて脂肪組織及び血中のレジスチン分子を高感度にウエスタンブロッティングにて検出・半定量する方法を確立した。次にマウス(ICRオス、10週齢)を普通食群、高脂肪食群の2群に分けて約1ヵ月間飼育した。約3日毎に部分採血し最終採血日に精巣周囲脂肪組織を採取した。1ヶ月の飼育後、普通食群に比べ高脂肪食群の方が有意に体重及び脂肪組織量の増加が見られた。レジスチン発現量は高脂肪食群の方が有意に低下しており、血清においても同等の結果が得られた。さらに、血清レジスチンの経時的変動は高脂肪食群投与初期に増加し、その後低下する傾向(2相性)を示した。このことから、脂肪組織の肥大に伴い何らかの因子がレジスチンの発現を抑制するという複雑なフィードバック調節機構の存在が示唆される。また、このことが、これまでの相反する研究結果の原因であると考えられた。
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