主に脂肪細胞から分泌されるホルモン様物質であるレジスチンはインスリン抵抗性を引き起こす責任分子として報告されたが、生理機能をはじめ発現レベル・血中循環レベルの変動とその調節機構に関しては諸説あり、いまだ未知の点が多い。昨年までの本研究ではマウスの脂肪組織や血中のレジスチンレベルを定量する方法を構築し、肥満や炎症時の変動を解析してきた。本年度は、このレジスチンレベルを変動させる食品成分に関する研究を中心に行い、いくつかの食品成分が脂肪細胞からのレジスチンの分泌を抑制しうることを示唆する結果が得られた。また、脂肪細胞からは善玉ホルモンであるアディポネクチンも分泌される。そこで、このホルモンに関しても対比的に検証した。 マウス前駆脂肪細胞3T3-L1を培養し、種々の分化誘導添加物刺激により油滴を有する脂肪細胞へと分化させた。この状態で培地中へ分泌されるレジスチン、アディポネクチンをELISA系によって測定したところ、その分泌が確認された。レジスチン分泌量は分化が進むにつれて経時的に増加していったが、ピークを過ぎると徐々に減少する傾向も見られた。そこで、これらのホルモンの分泌を調節しうる食品成分を探索するために、健康機能性が示唆されている食品成分を添加し、これらのホルモンの分泌への影響を調べた。その結果、ティーフラボン-3.3'-ジガレートなどのティーフラボン類、プエラリン、イコールなどのイソフラボン類、一部の柑橘系フラボノイドなどの食品成分はアディポネクチンの分泌には大きな影響を示さないがレジスチンの分泌には有意に抑制的に作用しうる可能性が示唆された。 脂肪細胞と並んで肝臓や小腸細胞からのリポタンパク質やアポリポタンパク質の分泌に関しても解析したところ、これらもイソフラボンなどの食品成分によって影響を受けることが判明した。このように脂質代謝や糖代謝に関わるホルモン・リポタンパク質の分泌は食品成分による影響を受けることが明かとなり、食品成分による生活習慣病の予防改善が可能であることが示唆された。
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