研究概要 |
近年、柑橘類、なし、メロン、カキ、リンゴ等の果実を東南アジア、アメリカ等への本格的輸出が農水省や地元JAによって計画されている。果実の長期保存を目的に、エチレン作用抑制効果をもつ1-メチルシクロプロペン(1-MCP)の果実への曝露処理による果実の長期保存に関する基礎的検討がなされている。しかし、エチレン阻害物質1-MCPは常温で気体であり、α-シクロデキストリン(α-CD)により粉末製剤化されているが、所定の濃度で曝露処理するための手法が殆ど確立されていないのが現状である。よって、本年度は以下の2点について検討した。(1)シクロデキストリンへのヨウ素、二酸化炭素ガスの包接体を作製し、その徐放特質について検討した。 ヨウ素溶液にα-CDを添加した場合、ヨウ素の徐放阻害効果が見られた。α-CD添加量の違いによるヨウ素溶液からのヨウ素徐放挙動の変化を調べるため、25℃において各種濃度のα-CDを含む0.38mMヨウ素溶液に空気をバブリングし徐放実験を行った。気体の放散挙動を液側物質移動係数で表わされるとして求めた式より、α-CDに対するヨウ素の安定度定数K=5813(l/M)を求めた。α-CDのヨウ素包接能力は高く、ヨウ素徐放製剤開発において、α-CDは徐放制御に有用であることを明らかにした。二酸化炭素のα-CD包接体作製は、圧力反応器内にα-CD粉末、またはα-CD溶液をいれ、二酸化炭素ガス圧を3MPaをかけることにより作製した。二酸化炭素包接α-CD粉末は、溶液法で作製した粉末が最も安定であった。作製粉末の特質を、FTIR,粉末X線により調べた。ガス包接CD粉末の特質について検討した結果を基礎に、1-MCP包接α-CD粉末作製を開始した。 1-MCPガスは、まず合成手法について検討し、1-MCPガスを純度98%で作製する手法を確立した。このガスを用いて、1-MCP包接α-CD粉末の作製手法を検討中である。
|