果実の長期保存を目的に、エチレン作用抑制効果をもつ1-メチルシクロプロペン(1-MCP)の果実への曝露処理による果実の長期保存に関する基礎的検討がなされている。しかし、エチレン阻害物質1-MCPは常温で気体であり、α-シクロデキストリン(α-CD)により粉末製剤化されているが、所定の濃度で曝露処理するための手法が殆ど確立されていないのが現状である。1-MCPガスの合成手法について検討し、1-MCPガスを純度98%で作製する手法を確立した。このガスを用いて、1-MCP包接α-CD粉末の作製手法を検討した。 1-MCP包接体作製の前に、炭酸ガス(CO2)のα-シクロデキストリン(α-CD)への包接特性と徐放特質について検討した。α-CD濃度とCO2圧力が、包接速度に影響を及ぼした。CO2圧力の増加により包接速度が増加し、最大包接比も増加した。飽和α-CD水溶液は、炭酸ガス包接CD結晶を生じた。CO2包接CD複合体の徐放特性は、各種相対湿度で測定した。湿度が高い場合、徐放速度が速くなった。 1-MCPのα-CDへの包接粉末を作製し、その粉末の1-MCP徐放特性及び昇温下での1-MCP徐放特性をガスクロマトグラフ(GC)と示差走査熱量計(DSC)を用いて検討した。α-CDのみが、1-MCP包接粉末を作製できた。他のCD、天然、及び修飾CDについて、包接体粉末作製にっいて検討したが、包接粉末は作製できなかった。1-MCPの包接体形成反応は、平面接触攪拌槽上部の1-MCPヘッドスペース濃度、α-CD溶液濃度を変化させた結果、1-MCPガスの吸収速度は1-MCPガス濃度について1次、α-CD濃度について約0.5次の比例関係にあった。これは、1-MCPガス吸収が、1-MCPガスについて擬1次反応を伴うガス吸収拡散律速であることを示唆している。攪拌槽の回転速度に比例して、1-MCPのガス吸収速度は大きくなった。包接体形成温度には、最適値(約20℃)が存在した。包接体粉末のDSC測定よりキッシンジャープロット解析の結果、解離活性化エネルギーは46.7kJ/mol算出することが出来た。
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