牛乳中に多く含まれるラクトパーオキシダーゼ(LPO)は過酸化水素とチオシアン酸塩からヒポチオシアン酸を産生し、食品汚染菌の増殖を抑える。これまでに、食品への効果的利用法を開発するために、モデル化合物を用いた最適条件の検討を行い、LPOとグルコースオキシダーゼを用いる条件を明らかにした。そこで、食品中におけるLPOシステムの効果について検討を行った。 牛乳・脱脂乳、ニワトリ卵およびチキンスキン抽出物を対象にして、LPOシステムの有効性を検討した。サルモネラ菌を接種した牛乳にLPOシステムを添加すると2時間後には生菌数増加は見られないが、保温時間を長くすると生菌数が数10倍に増加した。また、菌を接種した脱脂乳にLPOシステムを添加すると2時間後には生菌数の低下が見られたが、その後増加することが認められた。LPOシステムを加えない場合に比べると生育抑制効果はある程度は認められるものの、それほど大きなものではなかった。このことから、牛乳中の脂肪、タンパク質および糖質がLPOシステムの効果を抑えてしまうことが分かった。同様に、全卵やスキン抽出物を用いた場合でも、LPOシステムによるサルモネラ菌のある程度の抑制は出来たが、共存するタンパク質等による阻害により、十分効果的なものではなかった。しかしながら、サルモネラ菌の細胞壁を保護しているマグネシウムやカルシウムを取り除くためにポリリン酸を共存させてLPOシステムを作用させると、高い菌の生育抑制作用を示すことから、ポリリン酸にLPOシステムとの相乗効果があることが明らかになった。また、ニンジンジュース中でのLPOシステムの効果を調べたところ、極めて効果的な抗菌作用を示した。ニンジンジュースを10倍に希釈してもこの効果は認められ、ニンジン中にLPOの抗菌作用に対し相乗効果をもたらす成分が存在することが明らかとなった。
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