研究概要 |
牛乳は殺菌工程における加熱により、ラクトース関与のメイラード反応を受ける。その際のアミノレダクトン(AR)の生成に基づき、牛乳の熱履歴評価法(XTT法)が開発された。しかしながら、ARの生成はモデル溶液(ラクトース-ブチルアミン溶液)でしか確認されておらず、実試料中での直接的な証明はなされていない。そこで今年度の研究では、牛乳試料からのARの直接的な単離・同定を目的として、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNP)を用いたARのDNP誘導体化法の開発を試みた。さらにARの機能性を解明するために、ABTSやDPPHラジカルなどの種々のフリーラジカルに対するARの消去能を測定して、一般的な抗酸化剤との比較を行った。 タンパク質上からAR-DNP誘導体を遊離させることを目的として、Cu^<2+>を添加したところ、HPLCのクロマトグラム上に特徴的なピークが確認された。このピークを単離・精製し、NMR解析を行ったところ、推定した酸化型AR-DNP誘導体(OAR-DNP)と一致する構造が認められた。加えて、タンパク質由来(ラクトース-α-ラクトアルブミン溶液)のメイラード反応生成物に対して、本法を適用したところ、Cu^<2+>添加によりOAR-DNPが確認され、本法がタンパク質上のARの検出に利用できることが示唆された。 一方、合成したARはABTS及びDPPHラジカルに対して明瞭な消去活性を示した。その活性は既存の抗酸化剤として知られるアスコルビン酸にも匹敵する値であった。リノール酸の自動酸化の抑制能も評価したが、その活性は上記ラジカル消去活性よりも弱いことが明らかとなった。これはこの評価法が他の方法よりも長時間の反応を必要とするためであると推察された。
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