メイラード反応はタンパク質などのアミノ化合物と還元糖などのカルボニル化合物の共存下で生じる非酵素的褐変反応である。典型的な加熱食品である牛乳中で生じるメイラード反応には、ラクトースが関与しており、牛乳中には二糖類特有のメイラード反応生成物が存在している。その一種が4-デオキシオソン経路を経て生成するアミノレダクトン(AR)である。我々はこれまで、ARとテトラゾリウム塩XTTとの酸化還元反応に基づいた牛乳の加熱履歴評価法(XTT法)を開発してきた。しかしARの生成はモデル溶液でしか確認されておらず、実際の牛乳試料中における生成は確認されていない。そこで本研究では未解明なメイラード反応前期生成物であるARの生成機構の解明を目的に、ARの標識法の確立を行うと共に、XTT法の特異性について検証を試みた。 ARの標識には、銅イオン共存下において、ジニトロフェニルヒドラジン(DNP)を反応させることで、効率的な誘導体化が可能であることを明らかにした。またDNP誘導体の構造は、AR骨格に2分子のDNPが結合した形であることも明らかにし、そのHPLC分析条件(順相)についても最適化した。本誘導体化法を市販牛乳に適用してHPLCによる分析を行ったところ、モデル溶液由来のAR標識体と同一のピークが観察された。またXTT還元試験により、その標識体が消失することから、牛乳中で生じるメイラード反応においても、ARが生成することが明示され、結果的にXTT法がメイラード反応の初期に生じるARを前処理することなく、特異的に検出できる実用的な分析法であることを証明できた。
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