がん細胞は生体内において盛んに血管新生を誘導し、酸素あるいは栄養分を補給することで腫瘍組織の増大を可能としている。血管新生の誘導は細胞が低酸素状態になることが刺激になると考えられており、低酸素への応答を低下させることによってがん細胞からの血管新生誘導因子の産生は抑制されると考えられる。平成17年度においてがん細胞を低酸素状態で培養することにより、HIF-1αの安定化と血管新生誘導因子であるVEGF産生が誘導された。本評価系はがん細胞の低酸素応答評価に有用であり、本年度は種々の食品成分の活性評価を行った。 HepG2細胞に各食品成分を50%増殖阻害濃度および50%増殖阻害濃度の1/3、1/10の濃度になるように添加した後、1%酸素濃度の条件で48時間培養し、培地中のVEGF濃度をELISA法により定量した。 その結果、今回使用した30種類の化合物の中でポリフェノール化合物では、カテキン類のEGCG、EGC、フラボノール類のケルセチン、ケンフェロール、ガランギン、イソフラボン類のゲニステイン、ダイゼイン、フェノール酸類のクロロゲン酸、ロスマリン酸、およびその他のポリフェノールであるレスベラトロールに強いVEGF産生抑制活性が認められた。また、脂肪酸類では、共役リノール酸とイオウを含む短鎖脂肪酸であるリボ酸に強いVEGF産生抑制活性をもつことを明らかにした。これらの結果から、がん細胞の低酸素応答が種々の食品成分で抑制できる可能性が示され、より詳細な作用機構解明とin vivoでの有用性検証が必要である。
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