Cos-7細胞をB12無添加培地で培養すると、昨年度のHepG2細胞での結果と同様に、メチルマロニル-CoAムターゼのホロ活性はほとんど検出されなかった(したがって、細胞はB12欠乏状態にあると推定される)。培地中にB12を添加するとホロ活性は上昇したが、大過剰量(10μM)添加してもホロ活性はトータル活性の40%以下であり、多くの酵素はアポ型のままであった。一方トータル活性はB12供給細胞に比べ欠乏細胞では約2倍に上昇しており、培養細胞においてもラット肝臓と同様にメチルマロニル-CoAムターゼの発現量はB12欠乏で増加することが示された。ラット肝臓ではB12が欠乏するとミトコンドリアが肥大化しマトリックス酵素(グルタミン酸デヒドロゲナーゼやクエン酸合成酵素)活性の増加が観察される。同様の現象がB12を欠乏したCos-7細胞で起こっているかどうかを調べるために、上記マトリックス酵素の活性を測定したが、これら酵素の活性上昇は見られず、B12欠乏によるミトコンドリアの肥大化は肝臓に特有の現象であると考えられる。 メチルマロニル-CoAムターゼの補酵素であるアデノシルコバラミンの合成に関与するとされているが機能不明のタンパク質であるMMAAについて、抗体を作製し、ウエスタンブロット法で各組織での発現レベルをラットで調べた。その結果、脳で高い発現が見られたほか肝臓など様々な臓器での発現が確認された。また、B12欠乏ラットでは正常ラットに比べ肝臓におけるMMAA発現レベルの上昇が観察された。次に細胞内局在性を調べたところ、予想通りミトコンドリアに局在していた。さらにミトコンドリア内では外膜に局在することが示され、このことから、本タンパク質はB12のミトコンドリアへの輸送に関わっている可能性が示された。なお、メチルマロニル-CoAムターゼはマトリックスに局在しており、MMAAと直接相互作用していないことが明らかになった。
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