地上部生産量(リターフォールと幹成長量)と養分利用の関係を検討するため、日本海側(京都府北部)と太平洋側(高知県)に新たに調査林分を設定した。京都府北部では天然林、二次林、人工林に合計6林分、高知では天然林と人工林に合計6林分を新たに設置した。またこれまでより調査を行ってきた京都市内のヒノキ林の6林分と、高知7林分も調査林分に加えて、様々な環境条件下の調査林分を設定できた。調査林分では、リタートラップを設置し、リターフォールを7月から回収を開始した。回収したリターフォールは器官ごとに分別し、乾燥の後、秤量する処理を行っているところである。また、水分利用効率(生葉の炭素安定同位体比)を把握するための生葉の採取を夏季に実施した。土壌含水率についても定期的に観測を行っている。今年度に新たに設定した調査林分については、現在、試料の処理を進めているところである。これまでより調査を継続してきた調査林分については、特に、2005年に大量の雄花を生産したと推測されるヒノキに着目し、雄花生産量に影響を及ぼす要因を検討した。その結果、年平均気温、年降水量と雄花生産量には明確な関係は見られなかったが、立木密度および落葉窒素濃度と雄花生産量には有意な正の相関があった。個体あたりの雄花生産量は、個体あたりの占有面積と落葉の窒素濃度を説明変数とする重回帰式によって89%説明でき、1個体が占有する面積が広いほど、また落葉の窒素濃度が高いほど雄花生産量が多くなる傾向を示した。したがって、雄花生産量は個体あたりの占有面積で示される光資源量と、雄花および花粉に投資できる窒素資源の2つの要因によって説明できると考えられた。
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