1.供試材料 試験に供するタカツルラン植物体は、鹿児島県種子島で採集した種子とタカツルラン植物体の根から分離した菌との共生培養によって得た。培養によって得たタカツルランは、器官が未分化のプロトコームと根・茎が分化した幼植物体に分けて実験に供した。 2.増殖の方法 増殖試験は植物体を野外の森林内に埋設する方法により行い、補完的に室内実験も行った。 (1)野外実験 森林への埋設はタカツルランが自生する鹿児島県種子島西之表市古田(以下、古田)と、対照区としてタカツルランが発生しない中種子町にある厚生省薬用植物資源研究センター内の森林(以下、薬植園)で行った。古田はツブラジイを優占種とする森林で、薬植園はスダジイを優占種とする森林である。シイ林を選んだのは、これまでの研究でタカツルランはその生育の場として野外ではシイ林と高い親和性を持っていることによる。 埋設方法は次の3つの方法で行った。 (1)培養植物体のみを地中に埋設する、(2)培養植物体をブナのオガ粉と共に埋設する、(3)培養植物体を共生菌を培養したオガ粉と共に埋設する。 (2)室内実験 室内実験は次の3つの方法で実験を行った。 (1)シイタケのホダ木を培養基として用いる方法、(2)オガ粉を培養基として用いる方法、(3)ホダ木とオガ粉を混交して培養基として用いる方法。 以上の埋設実験から、次のような結果を得た。 (1)埋設方法は植物体を共生菌を接種したオガ粉と共に埋設するのが良い。 (2)埋設する植物体はプロトコームより根・茎の分化した植物体が良い。 (3)シイタケのホダ木の利用は有効である。
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