1.研究材料と供試植物体 試験に供するタカツルランの種子は鹿児島県種子島で採集し、供試用の共生菌はタカツルラン植物体の根から分離して得た。供試植物体は、昨年度の成果を踏まえ、できるだけ大きな植物体を得ることを目指し、次のようにして得た。(1)培養フラスコ内でオガ粉を用いて種子と共生菌との共生培養を行い、根・茎が分化した幼植物体を得る。(2)ポリ瓶(1000ml)にスダジイ材片を培養基とし(空隙はオガ粉で埋める)共生菌の前培養をする。(3)幼植物体を(2)の培地に移植し、充分生長させる。 2.増殖試験 増殖試験は植物体を野外の森林内に埋設する方法と室内での培養実験によって行った。 (1)野外実験:埋設はタカツルランが自生する鹿児島県種子島のコジイ天然林で行った。当初(1)の方法で埋設したが、その後の観察でポリ瓶内に雨水が溜り腐敗していることが観察されたので、(2)の方法に変えた。 (1)培養植物体は培養容器のポリ瓶と共に埋設。 (2)ポリ瓶の底をカット、もしくはポリ瓶をカットして植物体を取り出し培養基と共に埋設。 (2)室内実験:プラスチックケース(W31×D42×H30cm)に栽培シイタケのホダ木(3年)またはオオウロコタケが発生していたシイノキ材を野外で採集して入れ、植物体を培養基と共に埋設した。空隙は防湿と保護のために土壌を採取して充填し、その上を新聞紙で覆った。以下の2方法で行い、それぞれ25℃-暗黒条件下で培養し、灌水は水道水を適宜与えた。 (1)培養植物体は培養容器のポリ瓶と共に埋設。 (2)ポリ瓶をカットして植物体を取り出し培養基と共に埋設。 3.結果 (1)野外実験においても室内実験においても、埋設したタカツルランは生長した。 (2)供試植物体を得るうえで、供試菌の前培養期間が長すぎると培養基(=スダジイ材)表面に繁殖したコロニーは厚膜状となり、移植した幼植物体との間で共生が成立せず、植物は生長を休止し枯死した。
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