研究課題
基盤研究(C)
本研究は、亜寒帯林、冷温帯林、暖温帯林のわが国を代表する森林タイプにおいて、原生状態の林分の長期モニタリング調査と、それに隣接する極相林分主要構成樹種を主体とする二次林分の長期モニタリング調査によって、原生林の潜在的な動態特性と、発達段階に伴って変化する二次林の動態特性を同時に明らかにすることを目的とした。具体的には、北海道東大雪の亜寒帯針葉樹林、鳥取県大山の冷温帯ブナ林、長崎県対馬の暖温帯常緑広葉樹林を対象として、これらの天然林内にすでに設置してある2〜4haの調査区においてモニタリング調査を行った。同時に、約60〜80年以前に人為あるいは自然撹乱によって天然林が二次林化した極相林構成樹種を主体とした林分内にそれぞれ面積1ha(100m×100m)の永久調査区を設定して樹高≧2mのすべての生存樹幹を対象に毎木調査(樹種、根元位置、階層、胸高直径)を行った。原生林では構成樹種の更新にギャップ形成などの撹乱が重要な要因のひとつであることが推測され、ギャップ率やその形成率は構成樹種の新規加入率や個体群回転率と関係があることが明らかとなった。二次林調査区では出現樹種数と幹数のどちらにおいても亜寒帯林で最も少なく、林冠層における幹数は暖温帯林で最も少なかった。また、どの森林タイプでも原生林に比べて二次林において林冠層の本数密度が高く、ギャップ率は低いことが明らかとなった。さらに、原生林における構成樹種数が豊富な森林タイプほど、二次林の種多様性は天然林に比べて低い傾向があった。以上のことから、樹種の多様性と森林動態現象には密接な関係があると同時に、ギャップ動態が主要構成樹種の樹木群集動態に関連していることが考えられ、今後、天然林と二次林のモニタリングを同時に行うことにより、数ha規模での森林動態特性や森林帯レベルでの種多様性のメカニズムを解明できるものと考えられる。
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Ecoscience 13(4)
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In Ecology of forest : insight from long-term and large scale ecological research (Ed. The society for the study of species biology), Bun-ichi, Tokyo.