平成17年度でデータベース上に登録されている遺伝子の塩基配列を明らかにし、SNPマーカーを開発することが可能となった。さらに、マツノザイセンチュウ接種後に応答する遺伝子群を単離する技術を確立し、SNPマーカー開発へとつなげることが出来れば、連鎖地図をベースとする分子遺伝学と遺伝子単離を基盤とする分子生物学的アプローチの両面について融合を図ることが出来るため、今後のマツノザイセンチュウ抵抗性分子育種に大きく貢献できると考えられる。そこで、平成18年度は実際にマツノザイセンチュウを接種し、応答する遺伝子群の単離を試みた。 接種から同一日数経過した非抵抗性の接種個体と非接種個体間の形成層部位から構築したライブラリーに基づいて差分的に発現する遺伝子を約500単離した結果、接種した個体では、感染特異的蛋白質(PRタンパク質)であり、PR-5に分類されるThaumatin-like proteinを含む2つの遺伝子が極めて有意に発現していることが明らかとなった。このThaumatin-like proteinは、マツノザイセンチュウに対する生体防御関連遺伝子群の一つである可能性が高い。残るAntimicrobial peptideについても抗菌等に反応することが既知の遺伝子データベースから明らかとなっている。一方で、ファイトアレキシンに関連する遺伝子群やペルオキシダーゼ等のこれまでマツノザイセンチュウ抵抗性と何らかの関係があると考えられてきた遺伝子はほとんど単離されなかった。これら単離した遺伝子の情報に基づいて遺伝子マーカーを設計し、SNPマーカー開発の候補遺伝子群をスクリーニングした。
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