目的:再帰性反射ビーズ(40〜50μm径)は、平行光線がビーズに入射すると入射方向に光を反射する性質がある。そのため、入射方向から観察するとビーズ数と反射光の確認が容易かつ精確にできる。この性質をひずみ測定に応用した。本年度は、表面に反射ビーズを付着させた木材に力を加えた場合、ひずみと一定面積内の反射光量との比例関係を確認するため、一定面積内の反射ビーズ総面積(以下、ビーズ面積)の変化を測定することで、木材の変形・ひずみの測定を行うことが可能であるか検討した。 ビーズ吹きつけ装置:ビーズを均一に付着させるために、試験片の表面にスプレーのりをむらなく塗布し、その試験片と自反射型ガラスビーズをボール型容器に収め、エアスプレーで反射ビーズを吹き上げ、試験片表面に降りかかるようにして付着させる吹き付け装置を作製した。 実験装置:最初の観察位置とクロスヘッド移動後の観察位置がずれても、常に定点観察を行えるように万能試験機のクロスヘッド部にデジタルカメラを取り付けた。これによって、カメラはクロスヘッドの動きに伴って移動するが、さらに微動上下移動機構を取り付けた。デジタルカメラに接写レンズ、垂直落射照明装置を取り付け、反射ビーズの再帰性反射光を撮影した。 試験片の観察:ひずみが大きくなると早材部が圧縮され、反射ビーズが密集し、年輪に沿って縞状の模様が現れた。また、その模様が画像内で同時・均一に現れるのではなく、試験片上部から段階的に発生するのが分かった。今回は試験片木口面を観察したが、ひずみが大きくなり反射ビーズが密集してくると反射光も明るくなることが肉眼でもはっきり確認できた。 解析結果:ビーズ面積は圧縮が始まっても万能試験機が表示する試験片全体のひずみ(クロスヘッドの変位により計算)が小さい時点ではほとんど変化をみせなかった。しかし、ひずみが10%を越えるとビーズ面積は徐々に増加し、約20%を過ぎると急激に増加した。これは試験片の上下端が最初に変形し、徐々に試験片中心部に変形が伝播してきたためと思う。つまり全体のひずみと局所的なひずみには時間差が生じることがいえる。また、観察範囲ひずみとビーズ面積増加率との関係に近似曲線をあてはめると、比例関係にはならず2次関数曲線を描いたが、これを補正すれば、局所的なひずみを測定できると、ことが分かった。 結論:再帰反射ビーズを用いることで、木材の局所的かつ大変形のひずみが測定可能であることが確認できた。
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