3'末端をディゴギシゲニン(DIG)標識した2-3塩基の繰返し配列からなる80、84merのプローブを作成した。アメリカカンザイシロアリ職蟻から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、24種類のランダムプライマーを用いたRAPD-PCRによりDNAを増幅した。サザンブッロト、DIG標識ヌクレオチドプローブのハイブリダイズ、抗DIGアルカリホスファターゼ処理、発光基質CSPDによる化学発光を行い、RAPD-PCR増幅産物に含まれる単純繰返し配列をもつDNAフラグメントを選択した。化学発光の検出されたDNAフラグメントのDNA配列をシーケンサーで解析した。得られた配列を基に設計した10種類のマイクロサテライト領域増幅用プライマー対を用いて、仙台市、東京都、横浜市、横浜市鶴見区、京都市、神戸市、1西宮市、尼崎市、古座川町、粉河町、沖縄市、カリフォルニア州に生息する計123個体のゲノムDNAを鋳型としPCRを行った。電気泳動で分離された1230レーンに存在する対立遺伝子のサイズと数を数え、Genetic Data Analysisプログラムを用いて繁殖様式とコロニー間の関連性を解析した。 繁殖様式に関しては、近親交配の傾向が認められた。国内コロニー間の関連性に関しては、古座川町と西宮市からなるA群と、仙台市、東京都、横浜市、粉河町、尼崎市からなるB群に大きく大別され、B群とカリフォルニア州のコロニーの関連性が高いことがわかった。この結果、少なくとも2系統のアメリカカンザイシロアリが国内に侵入していることが示された。また、隣接している西宮市と尼崎市のコロニー間にはほとんど関連性が認められなかった。この結果、物流や引越しなどによる被害材の移動により新たな生息地に運ばれ、その後の有翅虫の群飛により周辺地域へ生息範囲を広げるという方式で、アメリカカンザイシロアリが生息域を拡大していることが示された。
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