研究課題
基盤研究(C)
本研究は、光酸化反応が木材中へ浸透するメカニズムを解析し、効果的な耐光処理を可能とすることを目的とする。17年度は「光照射時間-光劣化深さ」の関係及び「光の浸透深さ-光劣化深さ」の関係を以下の方法で検討した。1.スギ、ヒノキの辺材に人工太陽光(キセノン)を照射し、顕微FT-IR法を用いて、C=0の吸収強度の変化から光劣化層の深さを評価した。照射1500時間までに、スギとヒノキの光劣化層は、それぞれ早材部で深さ700及び450μmまで発達し、その発達曲線はいずれも照射時問の対数関数として近似された。また、スギの光劣化深さは常にヒノキの約1.5倍であった。2.スギ、ヒノキの同じ材から切片を得て人工太陽光を照射し、紫外(350nmピーク)および可視域(420nmピーク)における光透過性を評価した。透過光の強度は、木材の厚さに対して指数関数的に減衰し、少なくとも厚さ数百μmの範囲内では、ベール・ランバート式が適用できることが確認された。スギの場合、紫外及び可視光が元の10%にまで減衰した厚さは、それぞれ75及び220μmであり、これはヒノキの約1.5倍の浸透深さであった。3.光劣化深さが光照射時間の対数関数であったことは、光劣化深さの予測を可能にする重要な新知見である。これは、浸透光の指数関数的な減衰に起因すると考えられるため、今後、単色光を用いた詳細な検討が必要である。一方、スギの光劣化深さと光の浸透深さが、いずれもヒノキの約1.5倍であったことは、光劣化深さが光の浸透深さに依存することを示している。さらに、この比が、軟X線法で測定された材密度(スギ早材:0.22、ヒノキ早材:0.36g/cm^3)比の逆数(1.63)に近い値であったことから、光劣化深さと材密度が反比例する可能性が示唆された。このため、密度の異なる材部の光劣化深さを詳細に比較し、その関係を明らかにする必要がある。
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Journal of Wood Science 51
ページ: 531-536
Proceedings of International Symposium on Wood Science and Technologies (27-30 November 2005, Yokohama, Japan) Volume II
ページ: 317-318