研究概要 |
本年度は以下の2点について検討した。 (1)マガキにおける粒子取込みに関する検討 直径1μmおよび50nmの蛍光標識ビーズを用いて実験を行った結果、環境水から取込み開始30分後には消化盲嚢細管部の消化細胞内に1μmビーズが存在することが確認された。50nmビーズの場合は、ある程度粒子が凝集し塊を成した状態でのみ胃や腸管で観察された。本実験の結果から、ウイルスと同等サイズ(50nm)の粒子でも凝集することによりマガキの鰓の濾水活動により取込まれ消化管内に達することが明らかになった。 (2)マガキおよびムラサキイガイにおけるノロウイルス汚染状況 2005年3月に下水処理施設と港湾部の間に3調査点を設けて、天然マガキにおけるノロウイルス汚染状況をRT-PCR法により調べたところ、ノロウイルスは下水処理施設に近い調査点のマガキから高い頻度で検出された。このことから、下水処理施設からの排水がノロウイルスの汚染源となっている可能性が高いと判断された。 また、上記の3調査点のうちの1点(港湾部)において、2005年3月から2006年1月にかけ、毎月1回のサンプリングを行い、天然マガキおよびムラサキイガイにおけるノロウイルス汚染の季節変動を調べた。その結果、両二枚貝種において、調査を開始した3月および4月といった春季と12月および1月といった冬季に、高いノロウイルス汚染率(50〜90%)が示された。マガキ、ムラサキイガイのいずれにおいても2つ遺伝子型(G1,G2)のノロウイルスが検出されたが、いずれの貝の場合もG2の方がやや多く検出された。一般的にノロウイルス食中毒が流行する11月〜2月よりやや遅れて12月〜4月に二枚貝におけるノロウイルス汚染率が高まったことから、病気流行により多量のウイルスが下水中に排出され、不活化されずに下水処理場を通り抜けたノロウイルスが二枚貝に蓄積されることが確認された。
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