本年度は以下の3点について検討した。 1.養殖マガキにおけるノロウイルス汚染 17年度は2箇所、18年度は5箇所の養殖場において、マガキのノロウイルス汚染率をnested PCR法で調べ、いずれにおいても冬季に最高50%程度の高い汚染率を示すことが確認された。また、それぞれの養殖場の夏季における大腸菌群数を指標とした海水の汚染の程度と、冬季のカキにおけるノロウイルス汚染率の間に、ある程度の相関性が認められた。 2.養殖マガキの血リンパの酵素活性 平成17年3月から翌年の1月に掛け、2ヶ月間隔で6回サンプリングを実施し、養殖マガキの血リンパにおける酵素活性を市販のキット(APIZYM)を用いて測定したところ、血漿からは16種類の酵素が、血球からは17種類の酵素が検出された。これらの酵素は、年間を通じて常に高い活性を示す酵素群、常に低い活性を示す酵素群、および活性の季節変動を示す酵素群に分けられた。これらの酵素活性は、常法に従って30℃で測定した結果であるが、冬季の試料を低温(10℃)で測定すると活性が有意に低下し、実際の海域ではマガキの酵素活性は冬季にかなり低下しているものと考えられた。 3.浄化処理方法の検討 上記の結果を受け、水温を高めた状態で浄化処理を実施してみた。なお、この実験には定量PCRを用いる計画を立てていたが、間に合わなかったため通常のnested PCR法を用いて調べた。10℃で48時間流水浄化処理を行った場合は、浄化前と浄化後におけるノロウイルス汚染率に差はなかったが、25℃で48時間流水浄化処理を行ったマガキでは僅かではあるが汚染率(遺伝子型G2)の低下がみられた。この結果から、浄化処理に供するマガキにおけるノロウイルス汚染量が低い場合は、加温消化処理の効果が期待できるものと考えられた。
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