研究概要 |
1.GnRHを介した生合成エストロゲンの受容機構の解明 エストロゲンは強い精原細胞増殖促進効果を示し、プロゲルテロンとテストステロンは培養中にエストロゲンに変換されたことによって同様の効果を示した。エストロゲン拮抗薬であるICI182,780を併用することによって、エストロゲンのみならずGnRHによる精原細胞増殖促進作用をも阻害した。このことは、GnRHによる精原細胞増殖調節はエストロゲン合成分泌を刺激してエストロゲン受容体(ER)を介して起こっていることを強く示唆している。 2.GnRHを介して生合成されたエストロゲンの自己調節によるエストロゲンシグナル増強機構の解明 ヨーロッパイガイのMeER2はエストロゲンによって有意に発現誘導され、オーファン受容体に分類されるMeER1では誘導されなかった。MeER2と相同性の高いムラサキイガイのMgERもエストロゲンによって有意に発現誘導され、エストロゲンの自己調節によるエストロゲンシグナルの増強が強く示唆された。一方、エストロゲン拮抗薬であるICI182,780はエストロゲンの作用を阻害せず逆に促進したことから、ER発現に対しては作動薬として機能することが考えられた。ホタテガイのpyERでも同様の作用が観察された。これらの事実は、少なくとも二枚貝の配偶子形成に関わるエストロゲンシグナリングには自己調節機構が存在し、少ない局所的に分泌されるエストロゲンの情報を増幅することによって有効に伝え、速やかなビテロゲニン合成と精原細胞増殖を促す仕組みがあることが示唆された。 3.ホタテガイの頭部・足部神経節からのGnRHペプチドの単離同定 頭部・足部神経節抽出液からペプチド画分を順次純化して配列解析を試みた。GnRHに相当する配列は今のところ見つからなかったが、ムラサキイガイで同定されている閉殻筋弛緩に働くMytilus Inhibitory Peptideのホモログが見つかった。
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