1.自然発病魚(養殖マサバ)の病理学的解析 脳寄生粘液胞子虫Myxobolus acanthogobiiに感染した養殖マサバは、外観的に顕著な背腹湾を呈していた。病理組織学的に、シストは嗅葉、視蓋、中脳腔、第四脳室などに寄生していたが、脊椎湾曲に関与する部位は特定できなかった。 2.M.acanthogobii自然感染魚(キタマクラとマハゼ)の病理学的解析 M.acanthogobiiに感染していながら脊椎湾曲を呈さないキタマクラとマハゼの脳組織を調べた結果、視蓋葉、延髄、小脳などに多数のシストが観察された。キタマクラでは中脳腔、第四脳室、脊柱管腔内にも観察されたが、マハゼでは見られなかった。 3.M.acanthogobiiのPCRによる検出法の開発 M.acanthogobiiのSSU rDNAを標的としたPCR検出系を開発し、天然魚の疫学調査を行った結果、チダイとイゴダカホデリが宿主となることが新たに判明した。さらに、環形動物の寄生調査を行ったが、放線胞子虫およびPCR陽性反応は得られなかった。 4.脳外科手術による異物挿入で異常遊泳の再現実験 キンギョを麻酔して開頭手術を行い、第四脳室にガラスビーズ(約1mm径)を挿入した後、回復させて経過を観察した。その結果、体躯を左右いずれかに曲げ、「くの字」に湾曲して遊泳するという異常行動が再現された。 以上の研究結果より、M.acanthogobiiの感染に伴う病態の相違は魚種の違いによることが示された。また、第四脳室にビーズを挿入することで異常遊泳が再現されたことから、脊椎湾曲はシストの物理的圧迫によるものであることが示唆された。
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