研究概要 |
漁業資源を管理するには,魚種別の資源量を正確に推定する必要がある。その手段の一つとして仔稚魚の定量採集が考えられる。本研究は曳網速度等によらず,一定水深を保ちながら同じ網口面積で曳網する機能に加えて,軽量で取り扱いやすい仔稚魚の層別採集トロール網を開発するものである。本年度で行われた研究とその成果を以下に示す。 1)MOHT(一定水深を曳網する仔稚魚採集トロール網)をベースに,メモリーカードに設定した深度または時刻で網口が自動開閉する層別採集トロール網を設計した。軽い平行バーの自重によって網口が円滑に開閉できるように,網フレームの前傾角度を一定に保持できるネットの設計方法を考案し,これに基づいて試作した模型層別採集トロール網を用いて水槽実験を実施した。その結果,設定流速0.75〜1.5m/s(曳網速度2.0〜4.0kn)において3段のネットが順次開口された際に,網フレームの前傾角度はそれぞれ4.7〜6.9°,3.5〜7.2°,5.5〜7.9°となり,網フレームは設定流速または開口段によって前傾角度に大きな差がなく,ほぼ目標とした5°程度の前傾姿勢を保持することができた。 2)網口開閉型層別採集トロール網は,ネットの装着段数を増やしたときに綟網の抵抗によって開閉装置が作動しにくくなる可能性が考えられるので,網口開閉型に対してコットエンド開閉型(開口面積:0.6m×0.6m)の層別採集トロール網を試作した。長さ1.5mの前部ネットの後端に長さ2.0mの後部ネット3個を開閉フレームに取り付けて大型回流水槽で実験した結果,流速1.5m/s(曳網速度4.0kn相当)で手元スイッチの操作により後部ネットの開閉がスムーズに動作することが確認された。 次年度は,今年度行われた水槽実験で得られた結果をもとに,網口1.5m×1.5mの小型層別採集中層トロール網を製作し,実海域において網口開閉及びコットエンド開閉の動作状況を確認した上で,調査船にて稚仔魚の層別採集試験を実施する。
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